ニュースの概要
一般社団法人Nurture&Matureが、災害発生時に生じる「人のすれ違い」を防ぐことを目的とした『協働フィットネス』の実証実験クラウドファンディングを開始した。参加者同士が体を動かしながら連携力を高める取り組みで、企業協賛枠や出張ワークショップ枠も設けている。企業防災・BCP担当者を主な対象とし、災害時の初動対応における人的連携の質を事前に高める新しい発想のプログラムとして注目される。
引用元: 【企業防災・BCP担当者必見】災害時の「人のすれ違い」を防ぐ『協働フィットネス』実証実験クラウドファンディング開始!企業協賛・出張ワークショップ枠も受付 | 一般社団法人Nurture&Matureのプレスリリース(PR TIMES)
分析・見解
「物資」中心だった企業防災に、人の連携という盲点があった
多くの企業の事業継続計画(BCP)は、備蓄品や非常用電源、データバックアップといった「モノ」の整備に重点を置いてきた。しかし実際の災害現場で頻発するのは、情報が人から人へうまく伝わらない、誰がどの役割を担うか決まらない、といった「人のすれ違い」である。東日本大震災や近年の豪雨災害でも、備蓄は十分でも初動対応の連携不足で被害が拡大した事例が報告されている。『協働フィットネス』は、この見過ごされがちな領域に運動を切り口として踏み込む点が独自性といえる。
体を動かす訓練が連携力を鍛える、という発想の転換
従来の防災訓練は避難経路の確認や消火器の使い方など、個人の技能習得が中心だった。これに対し『協働フィットネス』は、複数人が同時に身体を動かす中で自然と役割分担やタイミング合わせが発生する設計になっているとみられる。スポーツ科学の分野では、チームスポーツの練習が組織内の暗黙的コミュニケーション(=言葉にしなくても伝わる意思疎通)を高めるという研究がある。これを防災文脈に応用する試みは国内でも珍しく、実証実験という形で効果を測定する姿勢は評価できる。
クラウドファンディングという手法が示す検証段階の正直さ
一般社団法人がクラウドファンディングで資金を募る形式を選んだ点にも注目したい。すでに確立した防災研修パッケージとして売り込むのではなく、「実証実験」と明言している。これは効果がまだ定量的に証明されていない段階であることを示しており、誇大な効果を謳う防災商材とは一線を画す誠実な進め方だ。企業協賛枠と出張ワークショップ枠を併設することで、資金調達と同時に実証データを広く収集する設計になっている可能性が高い。
今後の普及には定量的な効果検証が不可欠
企業が本格的に導入を検討するには、感覚的な「連携が良くなった気がする」という評価では不十分だ。初動対応の時間短縮や情報伝達ミスの減少率など、具体的な指標での効果検証が求められる。実証実験の結果公開時には、こうした定量データが示されるかどうかが、他の企業防災プログラムとの差別化の分岐点になるだろう。
ビジネスへの影響
BCP担当者が今すぐ検討すべき低コストな導入余地
出張ワークショップ枠が設けられている点は、BCP担当者にとって現実的な選択肢になり得る。大規模な設備投資を伴わず、既存の防災訓練日程に組み込める可能性があるためだ。まずは企業協賛枠で小規模に参加し、自社の防災訓練にどう組み込めるかを検証してから本格導入を判断するという段階的なアプローチが現実的だろう。特に従業員数百人規模の中堅企業では、全社的な連携訓練の機会が少ないため、こうした体験型プログラムが初動対応力の底上げにつながる余地がある。
協賛判断の基準は「効果測定の設計」にあるべき
企業協賛を検討する際は、単に支援するだけでなく、実証実験の効果測定方法を事前に確認すべきだ。どのような指標で「人のすれ違い」の改善を測るのか、協賛企業にフィードバックが提供されるのかを確認することで、協賛が単なる社会貢献活動ではなく自社の防災力向上に直結する投資になる。担当者は資料請求時にこの点を明確に質問し、投資判断の根拠として記録しておくことが望ましい。
サプライチェーン全体の連携訓練への発展可能性
単体企業内の連携だけでなく、取引先や協力会社との合同訓練に発展させる余地もある。災害時のサプライチェーン復旧では、社外の関係者との連携不足が復旧遅延の要因になりやすい。『協働フィットネス』のような体験型プログラムを社外パートナーとの合同防災訓練に組み込むことで、平時から顔の見える関係を築き、有事の連携精度を高める新たな投資領域として検討する価値がある。
